ジャンプSQ.連載企画「小越勇輝のインタビューコーナー〜Another Story〜」番外編

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vol1

小越

ふたりはテニミュの後で違う舞台や仕事を経験してきたと思うけど、
どんなところで違いを感じた? 戸惑ったことってあった?

原嶋
いっぱいあった! テニミュのときは切原赤也っていうキャラクターはもうすでに原作「テニスの王子様」の中にしっかりと描かれていたわけだけど、他の原作のない舞台は自分の役の性格…どんなときに明るくなって、どんなときに暗くなるのかっていうようなことは台本に一切書かれてないし、顔もわからない。いわば自分がその役の"原作"になるわけで、その"原作"としてどう自分が演じるキャラクターを自分で創り出していくかっていうところですごく戸惑った。テニミュではキャラクターに寄せる難しさで悩んでいたんだけど、原作としては…寄せるモノもないし、下手したらただ自分らしさしか出せないかも、役だけど所詮俺が喋ってるだけにしかならなかったらどうしよう…っていう怖さとはかなり闘ってきた。そこはテニミュを終えて自分自身、一番悩んだところだった。
神永
僕は…テニミュは歳が近い人たちが多いカンパニーだけど、他の仕事は自分が最年少ということも多くて、居残り練習する人がいないんだよね。もちろん先輩方から学ぶことはたくさんあるし、「この人に追いつきたい」と思える人との出会いもあったけど、同じ立場、同じ目線で競いあったり高めあったりする相手がいない、と(笑)。テニミュでは「こいつには負けないぞ」的にとことん切磋琢磨していたから。でも、常にそういう関係を築ける現場ばかりじゃなくて、むしろこれからは"自分の中で自分と闘う"、ということのほうが多いのかもしれないと感じたのが大きな違いだったし…結構戸惑いました。
小越
なるほどね。確かにテニミュは"同年代で競う"ってところは大きいかも。チーム内でもだし、ストーリー上でも闘うし。僕自身はふたりが外の世界を見ている間もテニミュカンパニーで公演ごとに新しい仲間を迎える立場にいたんだけど、やっぱり毎回新しいメンバーに新たな刺激をもらいながら、競いながら成長できている実感がある。実は、根がネガティブなんだよね(笑)。でもダンスが上手い人、歌が上手い人が来たときに、「うわぁ! 自分はできないよ」っていうネガティブ思考が逆に自分を高めていくというか(笑)、その焦りが自分を頑張らせてくれるモチベーションになる。「できないからこそやってやるよ!」って。競い合えるのは凄く楽しい時間です。
小越

"これは大切にしている"ということは?

原嶋
日記を書いてます。毎日じゃないけど。誰にも見せないから…ホントに自分の言葉、綺麗な言葉も使うし汚い言葉もある、ありのままに書いてる。その日の稽古とかで自分の気持ちがグッと動いたときの感情だったりを、なるべく言葉に残しておこうと思って。立海のオーディションを受けてる最中にも赤也に対しての気持ちを書いたりとか、結果が出る前から受かった後への自分への手紙なんかをかいたりもしてたよ。人間、"そのとき感じたこと"や見ていた景色って、いつかは絶対忘れていくでしょ? それを引き出しとして残しておきたいっていう気持ちが凄くあって、楽しいことも苦しいことも辛い気持ちも。自分が書いた言葉だから、後から読み返しても凄く自分に刺さりやすいし、感情の本質がちゃんと見える気がする。"自分から学ぶこと"もあるよなぁ…って。俳優を続けていくためにも、大事にしてる習慣です。
神永
これは最近特に強く思っているんだけど、「できないままで終わるのは嫌だ」という姿勢。近所に崖みたいな場所があって、稽古が終わってからとか、もやもやしているときは夜中でもひとりでそこに行って──。
小越
えっ、崖!?
神永
そう、崖(笑)。とにかく今日のことは今日のうちに解消したいから、そこで大きな声出したりしてバァーッ!て感情を出して、出し切ったら切り替える、ということをやっています。
原嶋
そこから俺に「どうしよう、できないよ」って、電話をかけてきたこともあったよね。
神永
あ、あったかも(笑)。ご近所に怪しまれるといけないから一応いかにもランニングの途中ですっていう格好で走っているけど、隣が神社でさ。たまにもの凄く怖い気持ちになっちゃって、15分くらいで帰るときもあるけどね。でも大体行くと1〜2時間はいる。
小越

じゃあ"これだけは負けない!"と思えるモノは?

神永
まだきちんと持っているわけではないけれど、俳優としての"幅"っていうのは、これから増やしていって負けないようにしたい、と思っています。自分自身の目標がどんな役でもできる"カメレオン俳優"で、そのためにはとにかく経験。例えば、通りすがりの女性を見てふと「片思いの学生の役だったらどんな気持ちになるんだろう」と考えてみたり、妄想というか(笑)、いろいろな気持ちに敏感になりながら生活しています。
原嶋
自分は単純に、自分がやった役に関してなら誰にも負けない! テニミュだったらもちろん赤也がそうだし、やっぱりそこは譲れないなぁ。「俺が一番よく演じられるんだ」っていう自信もあるし、そのためだったらなんでもできるし…まあそれはみんなそうなんだと思うけどね。でも役のことを考えて考えて演じてきたという自身や誇りは誰にも負けたくない。
小越
「負けたくない」っていうのは、なにかに対してもだけど、自分に対しても思うことだったりするよね。自分が折れたり「もういいや」って思ったら、たぶんそこで終わりだけど、限界を決めずにいられれば自分自身、どこまでもいつまでも伸びていけると思うし。神っち(神永)の"経験"っていうのもよくわかる。自分も普段、どんなときでもいろんなことを感じていたいって思うから。もの凄く感動したとか辛かったとかだけじゃなく、例えば「今日は空が綺麗だな」「風が気持ちいいな」っていう単純なことでもいいから、常に身の回りになにかを感じ、発見していたい。そういうところから自分の中でもいろんな思いが出てくるだろうし、柔軟に変わっていけるんじゃないかなって思うんだ。

初のインタビュアー役ということで、質問などを書き込んだ自前のノートを持参して座談会に臨んだ小越くん。久々の再会に最初は緊張気味だった神永くんと原嶋くんも、誠実な小越くんの進行に乗せられて次第に会話にも熱が籠り、テニミュについてはもちろん、役者同士として普段はなかなか話すことのないテーマにじっくりと向き合い、胸の内をぶつけ合い… 終わってみれば1時間を越す濃密な座談会となりました。

さて。次回はどのキャストが登場してくれるのか、第2回もお楽しみに!